昨晩は非営利シンクタンクの「構想日本」のフォーラムに出て、
行政の「事業仕分け」についてゲストとしてコメントしてきました。
行政の仕事を「そもそも論」からあらためて議論して、
ゼロベースで見直していくことの必要性を申し述べてきました。
それに関連し、いま朝の駅頭で配っている国政レポート(チラシ)を
ご参考までに転載します。
ちょっと長いですが、ご一読いただければさいわいです。
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霞が関の構造改革
官僚の相次ぐ不祥事
防衛省の守屋前事務次官のゴルフ接待、海上自衛隊の給油量訂正、
厚生労働省の薬害C型肝炎の情報隠しと、官僚の不祥事が続いています。
今どき官僚のゴルフ接待なんて信じられません。
21世紀の世の中で「お代官さまと越後屋」のような
古典的な癒着をやっていることに驚きます。
海上自衛隊の問題はシビリアンコントロールに関わる重大事件です。
国民の命を守るという厚生行政の使命を忘れた厚生官僚にはあきれます。
これまで官僚の不祥事が起きるたびに、
その場しのぎの対症療法に終始してきたツケです。
政治が官僚をコントロールできていない構図が改めて浮き彫りになりました。
政と官の関係を見直し、政治家も官僚も痛みをともなう
行政(官僚機構)の構造改革が必要です。
天下りとそれとセットの随意契約や官民癒着の問題、
特別会計の問題、公益法人・独立行政法人の問題等、
どれも公務員制度の弊害と密接にからみあっています。
官僚機構に見られる3つの悪弊
官僚機構の欠点は大雑把に言えば、次の3つに分類できると思います。
1.行政の無謬性神話 ⇒「役所は間違いを犯さない」という前提。
「役所は間違いを犯さない」という無謬性神話のために、
間違いがあっても隠す、見て見ぬ振りをする、という行動につながります。
また、ミスを犯さないという前提で組織が動いていると、
実際にミスが発生したときに適切な対応をとれません。
ミスを隠す組織は、失敗から学べません。
2.省庁タテ割りの弊害 ⇒省益あって国益なし。
中央省庁のタテ割り人事が、国益よりも省益を優先する役人を多く生みます。
当の役人本人は本気で「国益のために良かれ」と思って行動していても、
はたから見ると、単なる省益追及にしか見えない場合があります。
これは自分の省庁のモノサシでしか物事を見られない役人に見られる症状です。
例えば、WTO交渉での経産省と農水省の対決は日常茶飯事です。
貿易を拡大したい経産省と農業保護一筋の農水省は宿敵です。
現行制度のもとでは、国全体の利益を考える官僚はあまり育たず、
省庁間の連携は弱くなりがちです。
3.前例踏襲の事なかれ主義 ⇒減点主義の人事評価の行き着く先。
霞が関では、前例に従えば安全、横並びだから安全、
という事なかれ主義がまん延しています。
人事評価が減点主義だと、前例に捉われない思い切った行動はとれません。
危機に際しても、リスクを負って臨機応変に決断し行動するよりも、
事なかれ主義・前例踏襲の小田原評定になりがちです。
変化の激しい現代社会では、前例踏襲至上主義は致命症です。
ベトナムの橋崩落事故に見られる官僚機構の弊害
今年9月26日に起きた円借款(ODA)によるベトナムのカントー橋崩落事故でも
前述の3つの弊害が見られました。
カントー橋は国際協力銀行(JBIC)が248億円を融資し、
日本のゼネコンが受注したODA案件です。
建設中に事故が起こり、ベトナム人労働者54名が亡くなる大惨事となりました。
発注者はベトナム政府ですが、日本の政策金融機関が融資し、
日本企業が受注して工事にあたりました。
二国間の友好親善を深めるためのODAで
相手国の国民を54名も死なせてしまった大事故であり、
加害者の日本政府は誠実かつ迅速・的確に対応すべき事案でした。
ODA実施機関(JICA:国際協力機構)の元職員だった私としては黙っていられず、
事後直後に対処案をメモ書きして、ODA担当の小野寺外務副大臣に提出しました。
指摘したのは、
①役所は謝罪下手なので、政治家(大臣や副大臣)がすぐ現地に謝罪に行くべき、
②外務省は国土交通省と協力して事故原因を究明し、再発防止策を示すべき、
という点でした。
1.行政の無謬性神話
この事故でも官僚機構の欠点が見られました。
「行政の無謬性神話」に捉われ、大事故が起きることを想定していません。
結果的として、実際に事故が起こってから対応策を考え始め、対応が後手後手になります。
事故原因の特定や犠牲者のご遺族への対応も出遅れました。
また、相手国の国民感情や遺族の気持ちを考えると、
日本から外務大臣や副大臣がすぐに謝罪に行くべきでした。
しかし、事故の慰霊祭にはベトナムの副首相や閣僚は参加しましたが、
日本側は大使が出席しただけでした。
役所は誤りを認めず、誤りを認めないから、なかなか謝りません。
2.省庁タテ割りの弊害
国土交通省の技官と大学教授が事故調査に現地に派遣される等、
国交省と外務省の間に一定の協力関係は存在しますが、十分とは言えませんでした。
外務省は権限を侵されることを恐れず、事故原因の特定や再発防止策の検討は、
国交省に全面的に任せるべきだと思います。
建設現場の事故調査のノウハウを外務省が持っているはずがありません。
役所の縄張りよりも、国益を優先して、国交省を中心とした対応が望ましいと考えます。
3.前例踏襲の事なかれ主義
この事故はODA史上前例のない大惨事でした。
役所は前例のないケースに弱いです。
外務省の事故後の対応は、当事者意識が薄く、優先順位を誤っている印象を受けました。
駐ベトナム大使は事故直後にゴルフに行って週刊誌でたたかれました。
前例踏襲が身につくと、前例のない状況に直面すると右往左往します。
前例がなくても正しい判断ができる組織と仕組みをつくっておく必要があります。
【付記】私は11月2日の衆議院外務委員会で
カントー橋事故の原因究明と再発防止策検討のための調査委員会設置を提案しました。
その後、外務省は「カントー橋崩落事故再発防止委員会」を正式に設置しました。
官僚機構の構造改革の方向性
公務員制度改革はこの1年ほどで大きな方向性が決まりました。
政府・与党は、①霞が関の官僚機構、②自民党内の族議員、
そして③官公労・自治労等の公務員労組の三方から激しい抵抗を受けながらも、
公務員制度改革を進めてきました。
民間企業の人事制度の長所を取り入れると同時に、天下り禁止の徹底、
年功序列ではなく能力・実績に基づく人事評価、
民間の知恵やコスト意識を行政に取り入れるための官民人事交流の促進、
省庁間の人事交流の促進によるタテ割りの是正等を目指してきました。
しかし、公務員制度の構造改革はまだ道半ばです。
役所のカルチャーを変えるため、私が考える今後の課題として、
①局長以上の幹部人事の官邸一元化(省益中心の発想をやめさせるため)、
②期限付き任用制度の拡充(民間との人材交流拡大)、
③専門性と継続性を重視した人事異動、等があげられます。
また、天下り根絶に向け、早期退職勧奨を取りやめるべきです。
公務員制度改革が進めば、天下りや随意契約の問題、
公益法人・独立行政法人の問題の解決にもつながり、歳出削減も進みます。
消費税増税の議論より先に、歳出削減の徹底が先決です。
歳出削減に向けた改革の突破口として、公務員制度改革は大きな意味があります。
地方分権が進み、将来的に道州制が実現すれば、
国家公務員から地方公務員(道州政府)へと身分を移す必要もあるでしょう。
地方分権を進める上でも公務員制度の再整理が必要です。
また、特別会計の隠し資金の大部分は、天下り先の公益法人や企業を養うためのものです。
天下りがなくなれば、公益法人や企業との随意契約等の癒着もなくなるでしょう。
公務員制度改革は、他のさまざまな公的セクターの改革と密接に結びついています。
官と民、中央と地方の役割分担を見直し、小さくても効率的な政府をつくっていく上で、
公務員制度改革は重要なステップです。
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