アングロ・サクソン(英米)の執念と計画性はすごいです。
最近お気に入りの「幸福の研究」(*1)に出てくる話ですが、
アメリカ人の政策研究者は、恐ろしく長期の実験をやります。
1962年にスタートしたペリー・プレスクール・プロジェクトは、
3~4歳の貧困層のアフリカ系アメリカ人の就学前教育を扱い、
就学前教育の成果を検証するプロジェクトです。
*就学前教育とは、だいたい幼稚園教育のイメージです。
就学前教育プログラムに参加した子どもたちのグループと、
プログラムに参加しない子どもたちの対照グループを比較し、
子どもたちが成人になるまでフォローした調査を行いました。
就学前教育を実施している間の子どもの知的な成長は著しく、
さらに成長してからハッキリと差が出ることが確認されました。
就学前教育を受けたグループは、学校中退や留年が少なく、
大学進学率も高くなり、犯罪率や麻薬使用率が低くなり、
さまざまな良い効果が表れていることが確認されました。
就学前教育にかけた1ドルに対し、9ドルの便益が出ると計測され、
アメリカ政府が就学前教育に力を入れるきっかけとなりました。
私が「えらい!」と思うのは、その執念と計画性です。
3~4歳児の教育効果を20年後くらいまでフォローする執念と、
その追跡調査の結果を国の政策に反映させる計画性はすごいです。
この調査を行った教育学者は、まさにライフワークだったでしょう。
その教育学者の執念には、心から敬意を表したいと思いますが、
学者が執念深くひとつのテーマを追求することは珍しくありません。
むしろこの調査を企画した行政官を尊敬します。
この調査に予算をつけた行政官は、調査結果が出た頃には、
担当を外れていたか、退職していたことでしょう。
調査を成功させたことを、評価されることはなかったでしょう。
その行政官は、自分が20年後に調査結果を知る立場にはないと、
十分わかった上で、将来のために予算を確保したのだと思います。
口先だけではなく、「国家百年の計」を実行した行政官です。
目先の支持率アップしか頭にない政権担当者が見習うべき態度です。
また、第二次大戦中にロンドンが激しく空襲を受けていた頃の
1940年8月にチャーチル戦時内閣は、戦後の欧州・世界システムと
英国国内の社会・経済構造を検討するための委員会を設置しました。
ドイツ軍が英国本土上陸の準備を進め、英国本土上空においては、
ドイツ空軍との「バトル・オブ・ブリテン」が始まった直後に、
チャーチルはすでに戦後の世界秩序を検討し始めました。
もちろん「戦後」とは、英国の勝利を前提とした「戦後」です。
イギリス人の自信(楽観性)と計画性には、恐れ入ります。
上空をドイツ軍爆撃機が飛び、今にもドイツ軍が上陸しそうでも
イギリス人はくじけず弱気にならず、「戦後」の計画を立てています。
景気が悪くても、未曾有の災害や原発事故に見舞われても、
それでも適度の楽観性を持ち、計画的に前に進むべきです。
アングロ・サクソン系国民から学ぶべき点はまだ多いです。
*1:デレック・ボック著「幸福の研究」東洋経済新報社、2011年
*2:冨田浩司著「危機の指導者 チャーチル」新潮選書、2011年
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