以前に知り合いの都内の小学校の先生から、
授業で使うので小学6年生へのメッセージを書かないか、
との申し出を受けました。
シチズンシップ教育に関心のある私にとっては、
たいへん興味ある、そして、チャレンジングなお話だったので、
よろこんで受けました。
ちょうど小学6年生の甥っ子もいることなので、
小学6年生の社会科の教科書を国会図書館から取り寄せたり、
シチズンリテラシーの本を参考にしたりして書いてみました。
長くて読みにくいかもしれませんが、
ご一読いただければ、さいわいです。
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6年生の皆さんへ
これからの社会を背負っていく皆さんに、知ってほしいこと、お願いしたいことを書きました。自分の考えを押し付けるつもりはありませんが、「こんなものの見方もあるのか」と思ってもらえるとうれしいです。そして、この手紙が社会を良くする方法を考えてくれるきっかけになるといいと思います。
社会をより良くするためにできることは?
皆さんも社会の一員です。社会の中で人間同士が関係しあい、助け合って生きています。社会の中でしか人間は生きていけません。すべての人が安心してともに生きていける社会が理想だと思います。理想の社会、より良い社会をつくるために、どんなことができるかを考えてみましょう。
小学生の皆さんにできることもたくさんあります。環境を守るためにゴミを拾ったり、コンビニに買い物に行くときにエコバックを持っていったり、電車の中でお年寄りや妊娠中のお母さんに席をゆずったり、いろんなことができます。小さなことでも積み重ねていくことで、住みやすい社会、やさしい社会をつくっていくことができるのです。
また、皆さんが大人になったら、国会議員や警察官、学校の先生などにならなくても、ひとりの市民としてより良い社会をつくるためにできることがたくさんあります。働いて税金を納めること(*学校も教科書も税金でつくられています。)、地域活動(清掃や防犯パトロールなど)に参加すること、選挙に行くことなど。問題が起こったら他人任せにするのではなく、その解決のために自分にできることをやる。そんな責任ある大人(市民)をつくることが、皆さんが学校で教育を受けることの目的だと思います。社会をより良くするために行動する市民になっていただきたいと思います。
社会を良くする方法のひとつ:政治参加
より良い社会をつくる方法のひとつが、政治に参加することです。政治家が議会で税金の使い道や法律を決めています。学校にクーラーを取り付けるかどうか、学校の先生のお給料をいくらにするか、といったことも最終的には議会で決められます。議会には国会(衆議院と参議院)、地方議会(県議会、市町村議会)があります。
政治活動に参加するには、なにも国会議員になる必要はありません。一番簡単な政治参加は、選挙で投票することです。また、ボランティアとして政治活動を手伝うこともできます。政治家の報告会や勉強会に参加したり、政治家に政策を提案したり、といった様々なやり方で、政治に参加できます。
政治の世界では答えはひとつではない!
学校のテストでは、答えがひとつしかないことが多いですね。しかし、政治の世界では正しい答えは、ひとつでないことがたくさんあります。いろんな考え方の人がいて、話し合った上で、あるいは、多数決を行った上で、答えを出すケースが多くなります。
例えば、日本には死刑制度があります。しかし、世界には死刑制度のない国もたくさんあります。また、日本人の中でも死刑制度に賛成の人も反対の人もいます。死刑に賛成の議員も反対の議員もいます。死刑制度を持つ日本が「正しく」て、死刑制度のないイギリスが「間違っている」とは言えません。日本とイギリスのどちらが正しいとか、どちらが優れているということではありません。それぞれの国民の多数派が死刑をどう考えているかの「ちがい」でしかないのです。「正しいか、間違っているか」ではなく、「ちがい」であるということを理解してください。死刑について話し合っても、賛成派と反対派が歩み寄ることができなくて、結論が出ないこともあるでしょう。そのときは国会で多数決をとり、少数派の意見を尊重しつつも、多数派の意見を尊重するしかありません。政治の世界ではどうしても妥協できないことに関しては、最終的には多数決で決めます。
自分の頭で考えること
死刑制度をやめるべきか、といった重要な政治課題に関しては、きちんと自分の頭で考えて、自分なりの答えを出していくことが大切です。自分の頭で考える、といっても簡単ではありません。
まず事実を調べて、事実に基づいて、考えなくてはいけません。事実を見きわめるのは簡単ではありません。新聞やテレビも時には誤った情報を流します。インターネット上にも情報はあふれていますが、まちがった情報もかなり含まれています。情報の中から何が信頼できて、何が信頼できないかを判断しなくてはいけません。信頼できる情報を集め、その情報に基づいて事実関係を見きわめます。
専門家の意見を聞いてみたり、本やインターネットでいろんな人の意見を集めてみたりするのも良いでしょう。誰か特定の人の言うことをそのまま信じることは危険です。いろんな人の意見を比較することが大切です。感情や印象に流されることなく、データを見ながら、冷静にいろんな角度からものごとを検討してみることが重要です。「なぜだろう?」とか、「本当かな?」とか、「AさんとBさんの意見はちがうけれど、どっちが自分の意見に近いかな?」とか、いろんな質問を考えて、人に尋ねてみたり、自分で調べてみたりしてください。いつも「なぜ?」という質問を頭の中で何度も繰り返すと良いでしょう。自分で調べてみる、人に質問する、いろんな可能性を考えてみる、といったことを通じて、自分の頭で考えることができるようになってきます。
歴史を学んで、政治にいかす
政治家に対する信頼がなくなってきています。私は、小学6年生の男の子から「政治家はみんなワイロをもらって、カネのために政治家をやっているんじゃないの?」と言われて、とても悲しくなった経験があります。確かにそういう政治家が一部いたのは事実です。しかし、政治家全員がお金もうけのために政治家になったわけではありません。政治家や政党が国民から信頼されなくなったら、民主主義の危機であり、国の危機です。
第二次世界大戦前の日本では政党政治がきちんと機能していた時期がありました。しかし、政党政治家が腐敗し、ワイロをもらって自分たちに都合の良い政治を行ったことで、国民の信頼を失いました。その結果、政党政治が終わり、軍国主義の時代(軍人が政治を支配する時代)がやってきて、日本は無謀な戦争へと突き進んでいきました。政治が国民の信頼を失うことはとても危険なことです。
まずは政治家自身がしっかり反省し、政治の腐敗をなくしていかなくてはいけません。と同時に、政治家のレベルは国民のレベルを反映します。国民が自分の頭でしっかり考えて、良い政治家を選ばなくてはいけません。選挙に行って、「この人なら良い政治をしてくれそうだ」という候補者に投票することが大切です。政治をより良くするためには、国民と政治家のどちらもが努力しなくてはいけません。政治を良くすることが、社会を良くすることにつながります。
6年生の皆さんには、「より良い社会をつくるため、政治に関心をもち、自分の頭で考えて行動する。」、そんな大人になっていただきたいと思います。