この前参加した公開討論会で、野党議員が大学教育無償化を主張していました。
低所得の家庭の子どもでも大学に行きやすくなる、ということで、
わかりやすくて、多くの人に支持されやすい政策だと思います。
たぶん「大学教育の無償化」に公然と反対意見を述べる議員は少ないと思います。
教育経済学の授業を取っていた者として、あえて「ちょっと待った」と声をあげ、
敵をつくることは覚悟の上で、少数意見を述べたいと思います。
そして、反対意見とあわせて、代替案を提案したいと思います。
日本の今の状況の下で、大学教育の無償化を行えば、
比較的所得の高い家庭のメリットが大きく、そうでない家庭のメリットは少ないです。
結果として、格差の拡大(再生産)につながる可能性が高いと思われます。
なぜなら、大学進学率は親の所得水準と強い相関関係があります。
親の所得が高い子どもほど大学進学率が高く、
大学の無償化で大きなメリットを受けます。
親の所得の低い子どもは大学進学率が低く、
大学の無償化でメリットを受ける人数は少ないでしょう。
きっと「大学無償化で貧しい家庭の子どもも大学に行くようになる」
という反論があるでしょう。
しかし、子どもの大学進学率は、親の所得以外に親の学歴等の家庭環境に影響を受け、学費が無料になっても、貧しい家庭の子どもの進学率が大幅にアップするとは思えません。
結果的に、大学教育の無償化は、国民の税金を投入して、
比較的所得の高い家庭への補助金を大幅アップすることになります。
マクロに見ると、貧しい家庭から、裕福な家庭への所得移転になりかねません。
教育における公平性を最優先に考えるならば、義務教育段階の小中学校教育や、
進学率が9割を超えた高校教育にもっと税金を投入する方が賢明です。
また、いまの日本は、大学が乱立気味で、教育の内容やレベルの点において、
大学の名に値しない大学もあると言って間違いではないと思います。
そういう大学まで学費を無料にすれば、淘汰されるべき大学まで生き残り、
日本の大学のスタンダードを下げることにつながってしまいます。
国際的に見て日本の大卒者の評価が下がるのは、国全体にとってマイナスです。
さらに、教育経済学の一般的な考え方は、大学教育は効率的な投資と見なします。
大学教育に対する奨学金は、長期的に見れば割に合う投資と見なすことができます。
経済的合理性や社会的背景を考えた上で、大学教育の無償化よりも望ましいのは、
次のような3点セットの政策です。
1)低所得の家庭の子どもに対する奨学金の大幅な拡充。
(所得が一定額以下の家庭の子どもには無条件に奨学金を提供する。)
2)貸与の奨学金に関しては、親の所得に関係なく、すべての希望者に提供。
3)いったん社会に出た後、大学に戻りやすい制度の充実。
(必ずしも高卒後すぐに大学に行く必要はありません。
学費を自分で稼いで大学に戻る、というモデルを社会的に評価すべきです。
高卒直後の受験生より、高卒後働いた受験生を優遇するのもよいと思います。)
私が提案する上述の3点セットであれば、
①貧しい家庭の子どもの大学進学のチャンスを増やしつつ、
②貧しい家庭から裕福な家庭への逆の所得再分配を防ぐことができます。
これからの時代は【公平性や公正】と【健全な競争】の両立が重要テーマです。
私の3点セット提案は、公平性と健全な競争を両立できる案だと思います。
大学教育の無償化は、文部科学省の肥大化や、高等教育の国家管理化(計画経済化)といった予期せぬ悪影響を及ぼすことにもなりかねません。
大学教育の無償化は、教育経済学をかじったものとして、疑問を感じます。
善意に基づく政策が、結果として逆の効果を及ぼすことはよくあります。
「地獄への道は善意で舗装されている」とはよく言われる警句です。
一見正しそうに見える政策にも、やっぱり注意が必要です。
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